情報化におけるリテラシーについて

情報が経済・社会において支配的な役割を果たすようになった情報化社会は,情報が物質やエネルギー以上の資源とみなされ,その価値を中心に機能・発展する。そのような社会において,我々はそのような情報をどのように収集し,処理し,加工し,他者に提供し,検索するのか,その際に必要な能力(情報リテラシー)について考えてみる。

まず,情報とは人びとが判断を下したり行動を起こしたりするために必要な,種々の媒体を介しての知識である。これらが経済・社会的に支配的な役割を果たすようになる情報革命は1980年代に発生したといわれている。その情報の質的区別は,誰もが入手可能な情報,高度・高質・機密性の高い情報,虚偽情報に分けることができるが,それぞれに対する広義の情報リテラシーの重要性は強調されるべきである。その問題点をいくつか上げてみようと思う

情報リテラシーとは,情報活用能力である。ここでは情報を検索,収集する「選択収集フェーズ」と,それらを加工,編集する「理解フェーズ」,それを効果的に他者に提供する「伝達フェーズ」に分類した。

第一に「選択収集フェーズ」であるが,情報社会化に伴い,我々は有限な時間において,溢れる情報に対し自主的に取捨選択を行なっている。しかし,自己設定した情報収集のフィルターを通して得られる情報については,ある種偏りが生まれるのは,必然である。これは情報化の負の側面として広く認識され,ひとつの過激な思想とそれを根拠づける曖昧な量的なデータによって,過激な言動を繰り返す集団が組織されたりする。つまり「収集したい情報を無意識のうちに選択し収集しようとする」としているのである。

次に「理解フェーズ」であるが,得られた情報に対しての姿勢が問われている。客観的な「情報理解」と主観的な「情報の感じ取り」,それぞれの評価方法によって,情報の味わいが大きく異なる。「この情報は正しいものだ」という正解が自己の外側にある場合と,「この情報をひとつの意見として取り入れ,自分の意見を構築しよう」という正解を構築していくものの場合である。

最後に「伝達フェーズ」であるが,これは他者による前途2つのフェーズに関わる。つまり「どのように収集させ,理解させるか」という点においてである。情報化の大きな役割である,n対nの伝達が可能させたことを強調しなければならない。スチュワート・ホール(1980)は「エンコーディング・デコーディング理論」を発表したが,これに基づくと,受け手は「支配的」「交渉的」「対抗的」の3つの態度をとる。この背景には,送り手が,何か支配的な意図を持っていることがある。「送り手が伝えたい意図」を客観的に理解したうえで,選択収集を行うことが情報リテラシーといえるだろう。さらに逆説的には,自らが送り手になった場合,このような「伝えたい意図」がうまく伝達しない可能性を考慮し,伝達方法や媒介の工夫などを行えることも情報リテラシーといえる。