失敗の本質

失敗の本質(1991年、中央公論社)は、大東亜戦争(太平洋戦争)で大敗した「日本軍の組織論的研究」である。つまり、組織での失敗の本質を解いたものであり、その仮説は軍事だけではなく、企業・経営論にも通じている。

 

ということで、ポイントをいくつかおさらいしたい。

 

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1)盲目的な目的に向けた行動

徹底的に「異端・偶然」を排除した日本軍は、自分たちの向いている方向が正しいのかを考える機会をことごとく欠いていた。

盲目的に、組織として目指す先を疑わずに突き進み失敗した。

これは組織としての軌道修正だけではなく、まさにイノベーションを生まない組織になった。

 

2)環境に対する柔軟性の欠如

過去の戦における成功例のみを信じ続け、上層部の硬直した思考によって、イマココでの環境に対する柔軟性が著しく欠如していた。

環境に対して柔軟に戦術を変えることができず失敗した。

これは組織としてのありとあらゆる機会を失い続けることになる。

 

3)成功の過大評価と失敗への過小評価

先の戦での成功を課題に評価し続け、いまの失敗を「運」や「外部要因」によるものであると過小評価していた。

この従来の模範解答を目指してしまうような、成功への過大評価、失敗への過小評価が失敗をもたらした。

 

4)自己否定の欠如

成功を引きずらずにイノベーションを起こすためには、「自己否定」が必要である。

目標や問題構造は不変であると思い込み学習プロセスを構築することを「シングルループ学習」といい、常に環境は変化しており目標も問題構造も変化するとして常に学習プロセスを変化させることを「ダブルループ学習」と言う。先の戦では米国は後者をとり、日本は前者をとった。

特定のモノコトにとらわれずに柔軟に思考することが重要であり、その欠如が失敗をもたらした。

 

5)的確な上下コミュニケーションの欠如

対話をしない指揮官は、部下を数字としか見れず部下の動きすらも戦術のひとつであると考えてしまう。そのために上下コミュニケーションは必須である。

現場を知らぬ指揮官による戦術は往々にして的外れになりがちで、そのために失敗をもたらした。

 

6)「空気」をよむ

日本式の「精神論」は「空気」によるものが多いと言われている。「やる気」「根性」が「空気」によって相手に伝わり、ことがうまくいく、という「空気」が重く漂っている。

この過去のことに固執しつつ、それを無駄にしてはならない、という言論が蔓延り犠牲・無駄を増やし続け、失敗をもたらした。

 

7)権威主義

目的の不明確さ、意思決定者の不明確さが「空気」によって克服され、その「空気」が上司へのやる気の表明に精を出す部下、声の大きくも無意味な案の採択などを生み出している。

つまりマネジメントの不都合で全体としての成果が著しく下がっていることになる。マネジメントに対する認識の悪さや、忖度といった権威主義的な姿勢は改めなければならない。

 

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以上がポイントである。あとでコメントを追記したい。

 

しらいし