新型コロナウィルスについて

ケニアのスラム街にて感染症(具体的には結核)対策の仕事をしていました。医療従事者ではなく外から見ているひととして、新型コロナウィルスについて書き示しておきます。
ポイントは「パニックになるべき」「冷静さを兼ね備えよ」です。
今回のような「新型」の病原菌は70年代から今までで40以上。3年に1つのペースで新興している。つまり「想定外」や「まさか日本で」と予測自体は不正確で不十分だ。人類が免疫を持たない病原菌がやってくると、人口集団の30%、数千万人単位で死に追いやる可能性がある。実に14世紀のペスト(黒死病)1918年のインフルエンザなどではそうなっている。だからこそ、「新型〇〇」の場合、最悪の事態を恐れパニックになるべきである。
今ある病気のなかには「新型〇〇」でなくとも、1日で数千人単位で死に至る病がまだまだある。それが三大感染症であり、エイズ結核マラリアなどで毎日6千人が死亡している。それらの問題はむしろ、社会や医療機関がパニックになり、適切な判断ができなくなり、その他の重要な病気の治療、疫病管理に影響が出ることである。また差別や医療アクセスなどの脆弱性といった問題も複雑に絡まりあっている。であるから「冷静さを兼ね備えよ」と言える。
見えない敵の威力は、流行から3ヶ月ほどで見えてくる。その感染症がいかに多くの人を死に至らせるか、いかに早く多くの人に伝わるか、などのエビデンスが出てくる。これらによって判断方法、治療法、ワクチンを見つけるかなどの技術的なこともあるが、実は社会的な不安や懸念、それによる経済的・社会的インパクトを考慮しなければならない。
リスク・クライシスコミュニケーションでは、専門家によるエビデンスに基づいた事実よりも、マスコミやSNSで広がるトンデモが幅をしめ、それが経済的・社会的損失を拡大しかねない。
「パニック」と「冷静」のバランスから片一方を強く批判したり、批判されたりするのだ。被害をどれだけ「最小限」にしていくか、それが戦略であり、その運営には行政、専門家、マスコミなどさまざまな連携・協力が重要である。