ポジティヴ思考と歯磨き粉

ポジティヴ思考でよく議論されている(学術的な意味でなくSNSでラフに)事柄として、承認欲求と自己実現欲求がある。それらはSNS上では「認められたい欲」と「自分を高めたい欲」として議論されている。また「自己肯定感」という学術的にはあまり言及されない事柄についても触れたい。

 

人類の欲求には5つの段階がある。それを明快に説明したのはマズローアメリカの心理学者、1908年〜1970年)である。彼が説明した欲求5段階説は以下の通りである。

 

人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとされる。

 

1段階目「生理的欲求」
これは本能的な欲求である。食欲、性欲、睡眠欲である。これらが満たされて、次の段階に進む。

 

2段階目「安全欲求」
これは危機を回避したいという欲求である。それは衣住であり、からだを守る衣類、住むところなどである。

 

3段階目「社会的欲求」
これは集団に所属したり、仲間を欲すること欲求である。これがないと、ひとの孤独感や社会的な不安を感じやすくなる。

 

以上の3つは動物(主に哺乳類)でも現れている。空を飛ぶ鳥が群れをなしたり、ペンギンが身を寄せ合って寒さを堪えしのんだりすることが例としてあげることができるだろう。
これ以降は、外的な欲求から内的な欲求に変わる。つまりこれまではその目的が「身体の満足」であるが、これからは「心の満足」である。

 

4段階目「承認欲求(尊厳欲求)」
これは他者から認められたい、尊敬されたいと思う欲求である。

 

5段階目「自己実現欲求」
これは自分の能力を高め何かを作り上げたいと思う欲求である。

 

こんかい議論したいのは、「承認欲求」と「自己実現欲求」である。
この2つの本質的な違いは「評価を与えるもの」が他者か自己かである。「承認欲求」は他者の評価があって成り立つ。一方「自己実現欲求」は自己の評価によって成り立つ。

 

情報化とグローバル化によってコミュニケーションが「ALL to ALL」型モデルが活発化している。これはSNSが代表的であるが、誰もが情報発信できることによってそのSNSに所属し、その組織内で一定の評価(SNSであれば「いいね」であろうか)を得られることが「社会的欲求」と「承認欲求」を得られる場になった。SNSが誕生した背景にもこのような場を欲する需要があったのだろう。

 

その弊害として、その「社会的欲求」や「承認欲求」を満たそうとするばかりに「私って何がしたかったんだっけ」と考え込んでしまうことがある。
時に一歩引いて、なぜ自分がこれを成しているのか、思考することが必要であろう。

SNS上では「自己実現欲求」を満たすようなアカウントが人気を博し始めていると言える。これも新しい社会的な需要の高まりからであると思料できる。

 


「承認欲求」と合わせて議論しておくべき事柄として「自己肯定感」という言葉がある。これは「自分が自分らしくいられるために、自分で自分のことを認めよう」という考えであると思う。


またSNS上で議論されているのは「自己肯定感」を高めることで「承認欲求」から「自己実現欲求」への動きが促進されるとの言論である。その方法として他の誰かから「褒められる」ことが重要であるとの結論に至っていることが多い。

つまり、やる気がないひと(Aさん)に対し、「頑張ったね」「偉いね」と声をかけることで、Aさんは自己肯定感を高め、仕事を頑張ったり、プライベートも充実させることができる、という言論である。

 

結果としては「何かを頑張る」という自己実現のための行動がアウトプットされているが、その背景は「他者からの評価」である。「他者からの評価のための自己実現」は「承認欲求」だろうか、もしくは「自己実現欲求」だろうか。

 

ご意見頂戴したい。

しらいし
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