「なぜわたしはここで働くか」

 

いま仕事がひと段落して、同僚とくだらない話をしている。いま(11時過ぎ)からランチタイムまでは、このブログを書くことに時間をつかう。

 

わたしはいま、3つのわらじを履いている。つまり3つの社会的な顔がある。簡単に説明申し上げたい。①駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ(GMS)学部の5年生。②国連UNHCR協会のファンドレイザー。③国際協力機構(JICA)民間連携事業部の臨時職員、だ。

 

いままでこのような生活のことをいうと、「なぜ」と聞かれることがおおく、毎度説明してきた。この説明を幾度が続けるうちに、「わたしがなぜここで働くのか」について自分の頭のなかで整理がついた。そのため、ここにまとめておく。

 

まずそれぞれどんなことをやっているのか。ひとつひとつ整えていく。

 

  1. 駒澤大学GMS学部の5年生

これは社会一般的にみた「本業」にあたるだろう。(と思っている)簡単に言ってしまえば、卒業研究を控えた学生であり、月曜日の5限だけ、実際に大学までいっている。研究テーマは「ケニアを中心とした東アフリカの地域経済統合と貿易政策」である。所属するゼミナールは「国際経済」をテーマにしているが、学部の教授陣でもっとも仲が良いのは社会学者であり、メディア学、経営学の教授陣とも面識がある。学外では公衆衛生、国際関係、税法、国際保健などを専門とする先生方と仲良くさせていただいている。

 

つい先週に卒業研究の標題を大学に提出して、いよいよ書き進めていこうという状況だ。まぁ、いまは夏休みになるので学校はない。

 

  1. 国連UNHCR協会のファンドレイザー

これは国連の難民支援についてご寄付を募る仕事だ。いま世界には7500万人をこえる難民がおり、彼らを支援するのが国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)だ。わたしが所属する国連UNHCR協会はUNHCRのいちぶ機関であり、日本での民間にたいするファンドレイジングを担う組織である。

 

一言でいうとものすごくわかりにくいが、ファンドレイジングとは寄付を集めることだ。その対象となるのは大きく分けて3つあり、政府、民間企業、個人だ。政府へのアプローチ(といちぶ多国籍企業)はUNHCR日本支部が担い、民間企業と個人へのアプローチは国連UNCHR協会が担っている。わたしがいるのはF2Fチーム(Face to Face)といい、個人のみなさまへのアプローチを専門とするプロフェッショナルチームだ。つまり、駅前やショッピングモールに立ち、道行くひとびとに声をかけ、○難民問題について知ってもらい、○マンスリー難民サポーター(寄付者・支援者)になってもらっている。街中でチラシを配ったり、看板を立てたりして、声がけを続けている。

 

これは週に3日、参画させていただいている。

 

  1. 国際協力機構(JICA)民間連携事業部の臨時職員

これはもっとも説明が難しい。国際協力機構(JICA)は日本政府の政府開発援助(ODA)を一元に担う行政機関である。そのなかでもっとも新しい組織が、わたしが所属する「民間連携事業部」だ。その背景には、○開発途上国流入する資金はODAよりはるかに民間資金がおおきいこと、○新興国・途上国経済の市場が拡大していること、○日本企業も海外展開の機運が拡大していること、○それらを鑑み、日本政府では開発協力大綱(2015年)、日本再興戦略(2016年改訂)、未来投資戦略(2018年)において民間企業との連携を推進していくとしている。その結果できあがったのが「民間連携事業部」だ。

 

ここでは従来のODAだけでは途上国の経済・社会課題の解決への貢献に限界があるとの認識から、民間企業等のビジネスを通じた現地の課題解決を進めている。

 

具体的に何をやっているか。途上国の開発ニーズと民間企業の製品・技術のマッチングを支援して、成立すればJICAから提案企業へ事業を「委託」している。実績に基づいて、かかった費用を後払いしている。

 

わたしはこの部で応募・採用実績の推移の分析など、こんごの制度運営(改訂)のためのありとあらゆる仕事をしている。

 

これも週に3日、参画させていただいている。

 

以上が、わたしが履いている3つのわらじだ。

 

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そのうえで「なぜここで働くのか」について回答していきたい。

(まず、私の国際協力における経歴はこのブログをみてほしい『簡単な「経歴」など - RIKU Shiraishi; http://rikus.hatenablog.com/entry/2019/01/31/204746』

 

はっきりさせておきたいのは、わたしにとっての初めの炎は「なぜひとは幸せになれないのか」であって、人生における目標を「平等な機会提供と公正な取扱による誰も取り残さない社会の実現」であり、その一助になる仕事がしたいと考えていること。その説明は『趣意書 – RIKU Shiraishi ; http://rikus.hatenablog.com/entry/2019/07/03/223132』をみてほしい。

 

じゃあ、現状をどのようにみているのか。簡単に示すと下の図のようになる。

 

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命題を4つ定めている。以下のとおりだ。

 

①(国際協力のありかた)
よいものではない経済を途上国に導入するのか、正しいのか。
 
②(途上国のありかた)
精神的な自立をともなう経済発展の見本となれるか。
 
③(先進国のありかた)
物的繁栄ではなされない精神的自立のメカニズムを解析できるか。
 
④(経済全体のありかた)
そもそも資本主義経済は正しいのか。

 

これら4つの命題を解くために、わたしは仕事をしている。

 

まずもって、ケニアでの1年間の活動や国際協力分野での4年間を超える経験をもとに、貧困者には2つに区分できると考えている。

 

1つが、機会提供がなされているにもかかわらず努力を怠ったために貧困に陥ったひとびと。

2つが、機会提供がなされず(もしくは肌の色、生まれた地域、宗教などによって公正に取り扱われず)、貧困に陥ったひとびと、だ。

 

かんたんに言えば、貧困に陥ったのが、「自己責任」か「他己責任」もしくは「公的責任」か、である。貧困の理由が自分にある場合には、基本的に手を差し伸べる必要はないと考えている。(しかし他のだれかによって「自分で努力することを諦めた」状況は、手を差し伸べる必要があるだろう。難しい点だ。)

 

そのような認識のもと、2つの仮説を立てている。

 

 イ)途上国の課題解決にはビジネスがもっとも効果的であり、それは物的繁栄と同時に精神的自立を促すだろう。
ロ)手を差し伸べる必要があるのは、「ほかのだれかによって迫害されたひとびと」であって、その支援は非営利組織が行うべきだろう。

 

 

イ)の仮説に基づいて、わたしは『3. 国際協力機構(JICA)民間連携事業部の臨時職員』として仕事をしている。

 

ロ)の仮説に基づいて、わたしは『2.     国連UNHCR協会のファンドレイザー』として仕事をしている。

 

さらにこのような官(日本政府、行政機関)、民(民間企業)、学(学術機関)、NGO(これまではここにいた)をこえた経験によって、前途4つの命題のなにかについて答えに近づきたいとおもっている。

 

しらいし