190712 #しらいし雑感
アフリカへの投資の機運が高まる。日本政府は今年の8月末に「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」を横浜で開催する。9日に発表された、テーマは「アフリカに躍進を!ひと、技術、イノベーションで。Advancing Africa’s Development through People, Technology and Innovation.」だった。
そんななか経産省がこんな記事を出している。
デジタル革命が進展中 新たな姿にどう向き合う
https://meti-journal.jp/p/6461-2/
まずもって経産省がこのようなメディアを運用していることにびっくりだが、みてみるとさらにびっくりした。深堀したような記事が多く、とくに政策特集というコーナーはすごく良い。月別で更新されるテーマだが、これまでに「移動革命「MaaS」が拓く未来」「首脳会合だけじゃない「G20」」「空の移動革命がもたらす未来」「健康大国ニッポン」「社会課題に挑むイノベーション新潮流」「知財で未来を切り拓こう」という私個人的な知的好奇心をくすぐるテーマが多い。そして7月は「アフリカビジネスの新戦略」だ。
その第一弾として上記の記事が8日に公開されていた。
そもそもアフリカは16世紀の大西洋奴隷貿易を経て、西欧列強の植民地とされた歴史を持つ。1920年代には植民地型経済構造(第一次産品のみを輸出、しかも著しく低い生産性。)になっていた。60年代の「アフリカの年」を経て政治的には独立を果たしたが、経済的には旧宗主国であるフランスやイギリスといった大国に依存していた。各国の指導者は貧困の脱却を急いだが、70年代にはオイル・ショック、その後の農作物の国際価格の停滞、干ばつ、気候変動、急激な人口増などといった危機に直面し、いまでも貧困、飢餓、紛争、環境破壊など負の言葉で特徴づけられる。
00年代までの企業による外国直接投資は資源・エネルギーやインフラ開発(とくに運輸)が主であった。しかし、グローバル化や情報化などを背景としてその投資額が増えるとともに、その投資分野についても多様化してきている。
そこで「新戦略」が必要というわけだ。なぜか。
企業が彼らの行う事業を拡大していく場合、3つの方法しかない。① 既存の商品・サービスをほかの市場に持っていく。 ②依存の市場でほかの商品・サービスを持ってくる。(もしくは開発する) ③新しい市場で、新しい商品を開発する。
まさにアフリカへの進出は「新しい市場への進出」なので ①か③が検討されるが、① は通用しない。なぜか。
さきほど書いたようにアフリカ諸国の多くは今でもインフラが脆弱であり、特有の文化的、社会的な違いがあるためだ。さらに最後のフロンティアであるアフリカにおいては面白い事情が発生している。
つまり、水や電気、住所、戸籍などをいった基本的な公共サービスよりも先に、「デジタル革命」の恩恵を受けていることだ。表1は東アフリカのケニアにおける携帯電話の保有率を示している。まさにうなぎのぼりだ。
表1
(出所:世界銀行のデータをもとに筆者作成。)
こうした社会環境のうえだと、さきほどの 「既存の商品・サービスをほかの市場に持っていく。」は困難だ。
記事から引用するが「政府が十分な社会インフラを整備できない分野において、民間がテクノロジーを通じ、その機能を代替するサービスを提供する動きも広がる。(中略)これらの革新的なビジネスを提供する主体の多くは、設立間もないスタートアップである。」まさに。
アフリカ進出について考える日本の企業は「デジタル革命」と「新戦略」について熟考する必要性があるだろう。さらに、そこには大きなビジネスチャンスがあることにも言及しなければならない。(ここは次回かこう。)
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しらいし