年金制度について 190716 #しらいし雑感

年金制度について。

まず、日本の年金制度の基本的な枠組みは3つの層に分けられている。

1つ;国民年金公的年金保険

2つ;厚生年金保険—公的年金保険

3つ;企業年金、確定捻出年金などー私的年金保険

1つめの「国民保険」は全国民が加入する。そして給付されるときには、「老齢基礎年金」に名前が変わる。

これは40年間保険料を納めていれば満額支給される。16年では、支給される年金額は年間78万円ほど。月では6万5千円ほどになる。

これは収入に関係なく、保険料を納めた機関によってこの基礎年金額は一律になる。

この1つ目の「国民保険」のみをもらえるのは、(いわゆるサラリーマンではない)自営業者は、農業者、会社員や公務員に扶養される配偶者(専業主婦など)だ。

2つめの「厚生年金保険」はサラリーマンや公務員が、1つめの「国民保険」に加えて、もらえるもので、報酬に比例して支給される。(収入が大きいともらえる額も増える)

以上の2つが「公的年金保険」とよばれていて、該当する者は必ず加入する必要がある強制加入型の年金になる。

では、自営業のひとは厚生年金保険に加入されないので、老後心配ではないか。とおもうかもしれない。そのような不安を解消するために任意の年金制度も用意されている。

例を挙げれば、「付加年金」、これは国民年金保険料にプラス400円すると、支給されるとき年間9万6千円上乗せになる。さらに「国民年金基金」や「企業年金」が挙げられる。これらは企業によって加入できるできないがある。

以上が、日本における年金制度の概要だ。

公的年金」(1つめと2つめ。加入が義務)「私的年金」(3つめ。加入が任意)

さらに支給に関する仕組みをみていこう。

公的年金は「賦課(ふか)方式」だ。文字で見ると難しいが、仕組みはシンプル。現役世代から集めた保険料を老齢世代の年金給与に充てている。若者の我々はいま、高齢者にあげて、自分が高齢になったらそのときの現役世代にもらう。という簡単な仕組みだ。

ほとんどの先進国の公的年金はこの方式をとっている。

たいして私的年金は、「積立方式」だ。これは自分の納めた保険料を積み立てておいて、それを株や証券などを運用して増やし、将来年金として受け取る仕組みだ。

じゃあ、現行の年金制度では自分が支払った額と同じだけの額を受け取ることができるのか。これを計算しているのは「年金数理」というものだ。

「その人が納めた保険料」=「その人が将来もらえる給付額」になっていればよい。

20歳から60歳までの40年間納めて、60歳から80歳までの20年間受け取るようになっている。

つまり「その人が40年間納めた保険料の総額」=「その人が20年間で受け取る年金の総額」ということだ。

じゃあ具体的にいくら支払っていて、いくら受け取れるのか。1つめも「国民年金」はわかりやすい。16年度の月当たりの保険料は1万6260円だ。年19万5120円。40年では約780万円だ。

いっぽう受け取れる額は、年78万円で、10年で780万円だ。

つまり、10年間もらえれば、大体元が取れる計算になる。

さらに、言及しなければいけないのは、平均寿命についてだ。女性は87歳、男性は81歳だから、65歳からうけとっても女性は22年、男性は16年間うけとれる。ということは、長生きすればするほどお得になる制度といえる。

同様に2つめの「厚生年金」の場合を考えてみる。厚生年金保険料は月給の約2割だ。(18.3%)ちなみに、会社員や公務員は労使折半になるので、自分が負担しているのは1割ほどだ。

けっきょく、納めているのは月給の2割ほどで、受け取るときにはその2倍になるので、(支払いが40年で、受け取りが20年で計算されているため)、月給の4割ほどが、定年後に年金として支払われる。

この計算をすると月30万円もらうひとは、高齢になったとき月12万円ほどが受け取れる。

ものすごくわかりやすいが、気を付けておきたいのは、その月給については「生涯を通じての平均給与額」であることだ。

ほとんどの場合、若いときは給与が低く、年を取っていくと給与が増える。そのため退職間際になって計算をすると、「あれ、年金少なくない?」と思ってしまいがちだ。

じゃあ、年金制度は破綻しないのか。

「保険」であるので破綻の可能性は極めて低い。

保険は生きていく上でのリスクをカヴァーするためにある。例えば、海外旅行保険は、もし海外で病気になってしまった場合に備えて加入しておいたりする。年金は「長生き」することに対するリスクをカヴァーしている。

海外旅行保険と一緒で、リスクをカヴァーすると同様に、「実際に海外で病気になったひと」に支払われるのは、「保険料を支払ったけど、海外で病気にならなかったひと」が支払った保険料だ。

年金は「早くに亡くなってしまったひと」に支払われるはずだった保険料を「長生きしたひと」に渡す。ということは、年金保険加入者のどのぐらいのひとがどのぐらいの年齢で亡くなるかの推測が大幅に間違っていなければ、破綻することはない。

議論されるべきは年金制度ではなくて、経済成長の政策について、だ。

このようなほとんど破綻する可能性のない制度が機能させなくするのは急激な制度変更だ、といえる。40年や60年のレベルでの制度設計をしているため、政治情勢によってそのたびに変更されていては、制度の検証もままならない。

さらに、年金の制度設計は人口推移と密接に関係しており、その予測は比較的簡単だ。つまり、(10年後の人口)=いまの人口—(今後10年間で死亡するひと)+(今後10年間で生まれるひと)だ。ものすごくわかりやすい。

さきのブログにも書いたが、選挙が近い。

で、年金制度について議論が進んでいるが、そんなことは政治の場で議論すべき点ではなく、その制度を運営している行政府を監視することができるかが重要だ。さらにいえば、経済成長の政策がもっとも重要だ。

20年後「1.5人で1人の高齢者をささえる」という考え方が社会保障の議論では必ずでてくる。

まず間違いは、支払う現役世代の人数ではなく、「金額」の問題であるからだ。

正しい議論は「人数」×「収入」=「金額」を使うべき、だ。つまり頭数より、一人ひとりがどれだけ稼いでいるか、が重要だ。

これまでの40年間で現役世代が2割減ると推測されている。単純計算すれば、1年間で0.5%の減少なので、大きな影響はない。その分を経済成長でカヴァーができれば、何ら問題ない。さらに、女性の収入が増えていることも追い風といえる。人口が減少してもそれを上回るだけの収入の伸びがあれば、大きな問題にはならない。

「人数」に関しては、減少されるとわかりきっていて、年金数理にすでに組み込まれている。

重要なのは「収入」だ。いかに現役世代に稼がせるか、だろう。

この選挙戦においても、「経済成長」が焦点になることをのぞむ。

しらいし

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