角を曲がる

 

「角」に纏わる諺がある。それは「笑う角には福来る」というものである。
ここでいう「角」は英語でいう「コーナー」という意味での「角」ではなく「門」である。つまり「門(もん)」なのである。

単調にあの角を曲がれば幸福になるというわけではない。もっと意義深い。この「門」という文字には「家族」「友人」という意味もある。これは出入り口としての「門」から派生したものだ。つまりこの諺の意味は「笑っている家族・友人に囲まれたひとには幸福が訪れる」ということだ。決して角を曲がったら幸せになれるという受動的な動きではなく、些細なことでも笑っていられる近しいひとびとに囲まれていることが幸せへの第一歩なのである。

3月から4月は「角を曲がる」ことが多い季節である。これまでの職場や学校、クラスといった人間関係から少し離れることが、そういえるだろう。翻っていえば、いまこそ「角」とはなにかと問える良い季節であろう。

「角を曲がった」いま、あの時支えてくれていたのはあのひとだった、あの時に助言をくれたのは、あのとき叱ってくれたのは、と思い出すことが増えた。これは失ってから気づくことが多いということを皆に伝えたいわけではない。そういうひとにこそ、日頃お世話になっているひとびとへ感謝を伝えておくべきだ、と自らに伝えたい。この一心である。

儚い人生のうち彩を添え、味を出す。そんな角に感謝を伝えながら、この人生を全うしたい。

しらいし